マイホームの購入には多額の資金が必要なため、「一生に一度の大きな買い物」ともいわれます。多くの方が住宅ローンを利用してマイホームを購入していますが、住宅ローンには審査があり、誰でも希望どおりの住宅ローンが利用できるわけではありません。
そこで、今回は住宅ローンの申込みから借り入れまでの流れや審査のポイントを紹介します。事前にポイントを押さえて、万全の準備をしましょう。
住宅ローンの申込みから借り入れまでの流れ
住宅ローンの審査は、事前(仮)審査と本(正式)審査の2段階で行われます。事前(仮)審査で簡易的な審査を行ったのちに、本(正式)審査に進みますが、審査に必要な日数や必要書類は金融機関によってさまざまです。
ここでは、一般的な住宅ローン(新築・購入)の申込みから借り入れまでの流れについて説明します。
住宅ローンの申込みから借り入れの流れ
住宅ローンの申込みは、具体的に購入を検討し始めた段階で進めていきます。
1.事前(仮)審査
事前(仮)審査とは、本(正式)審査の前に行われる仮審査のことです。住宅ローンの借り入れが可能かどうかを、金融機関にあらかじめ確認してもらいます。「売買契約を結んだにもかかわらず、借り入れができなかった」という事態を避けるために、一般的に売買契約の前に行います。
金融機関によっては窓口で申込みの手続きが必要ですが、来店不要でインターネットで24時間申込みができる金融機関も多くあります。
事前(仮)審査の段階では、購入予定物件に関する正式な書類は不要です。物件の内容が正確にわかるチラシやパンフレット、土地や建物の謄本や公図、間取り図などがあれば問題ありません。
なかには、個人情報のみの提供で事前(仮)審査を行っている住宅ローンもあります。このような事前(仮)審査では物件情報が求められないため、自分がどの程度の住宅ローンを組めるのか目安を知ることができます。
事前(仮)審査はあくまでも打診であるため、実際に住宅ローンを借り入れするには、さらに詳細な確認が必要な本(正式)審査への申込みが必要です。本(正式)審査への申込みは、事前(仮)審査に通過していることが条件になります。
2.本(正式)審査
物件の売買契約を結んだら、本(正式)審査の申込みを行います。本(正式)審査では、売買契約書や重要事項説明書などの正式な書類の提出が必要です。
事前(仮)審査に通り、特に問題がなければ本(正式)審査にも通る可能性が高いと考えられますが、審査に落ちるケースもあるため注意が必要です。どのような場合に審査落ちになるのかは、のちほど詳しく説明します。
3.契約
本(正式)審査に通れば、ローンの契約を結びます。
住宅ローンの契約は窓口へ出向くのが一般的ですが、最近では事前(仮)審査の申込みから契約までWebですべて完結する金融機関も増えています。いずれの場合でも、金融機関は、契約内容の説明や借入意思の確認、保証人が必要な場合は保証意思の確認をして契約を結びます。
4.融資実行
融資を受けるのと同時に、不動産会社、買い主・売り主とで売買契約書に基づき、代金の支払いと物件の引き渡しを行います。融資が実行されると売り主への支払いも同時に行われるのが一般的ですが、所有権の移転や抵当権の設定等の登記をする必要があるため、司法書士も立ち会います。
住宅ローンの審査の時間
事前(仮)審査の結果連絡は、最短で即日から3日~4日程度です。しかし、不明な内容の確認や追加で書類を求められるなどすると、1週間以上かかることもあります。
本(正式)審査時は、売買契約書や重要事項説明書などのさまざまな書類の確認が必要です。また、金融機関は担保の価値を評価するため、対象となる物件調査を行います。そのため、事前(仮)審査よりも時間がかかることが多くなっています。
せっかく気に入った物件が見つかっても、事前(仮)審査に時間がかかってしまっては、物件を他の人に買われてしまう可能性があります。また、売買契約書のローン条項(金融機関から融資の承諾が得られなかった場合に、手付金の放棄や損害賠償などの不利益を負うことなく契約を解除できる条項)の期限内に本(正式)審査が完了していないと、大きな損害が発生しかねません。
そのため、スケジュールには余裕を持って必要書類をしっかりとそろえ、確実に行うことが何よりも大切です。本(正式)審査にかかる期間の目安は2週間〜3週間程度です。
住宅ローンの審査で重視されるポイント
金融機関が住宅ローンの審査で重視するポイントは、簡単にいうと「最後まで返済できるかどうか」です。住宅ローンの審査ポイントを知っていれば事前に準備できることもあるため、審査に落ちないように確認しておきましょう。
事前(仮)審査時の審査ポイント
住宅ローンの審査に関係する、重要な項目について説明します。
年齢(完済時の年齢)
多くの金融機関では、完済時年齢を80歳前後としています。例えば、35年のローンを組みたい場合には、遅くとも44歳までに申込みが必要ということです。
しかし、この年齢は完済時年齢から見て、あくまでも「申込みが可能」であることに過ぎません。65歳以降では退職して年金生活に入ると考えられること、健康上のリスクが高まることなどから、完済時年齢が高くなると審査にも影響します。勤務先の定年に合わせて、住宅ローンが完済できるライフプランとなるのが理想的です。
勤務先、雇用形態、勤続年数、年収
正社員であれば定年まで勤務する可能性も高くなるため、正社員であることはプラス要因です。また、年収が高く勤続年数が長いほど転職リスクは少なく、安定した収入が得られると判断されます。勤務先が「大手か」「中小企業か」「個人事業主か」でも判断は異なります。大手の会社員や公務員は安定性があると判断され、評価されやすくなるでしょう。
家族構成・居住形態
マイホームは生活の拠点です。家族がいれば「家族のために働く」という意識から、住宅ローンは一般的に返済の遅れが少ないともいわれているため、有利になるでしょう。親の土地に2世帯住宅を新築するのであれば、将来相続を受ける可能性もあることから評価につながります。
また、これまで賃貸住宅に住んでいたのであれば、支払っていた家賃の実績から、住宅ローンが「無理のない返済」と判断される傾向にあります。
他社借入件数、借入総額
他社の借入件数や借入総額が多いと、返済能力という点で審査は不利になる可能性が高くなります。不要な借り入れや利用していないカードローンは、事前に整理しておく方が賢明です。
返済負担率
他社借入件数・借入総額とも関連しますが、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)も審査で重要視される傾向です。年間の返済額は、他社で現在利用している借り入れと新たに組む住宅ローンの年間の返済額を合計して計算します。
返済負担率の上限は金融機関によって異なり公表されていませんが、一般的には30%から年収が高ければ40%程度が目安です。年間返済額を計算するときの金利は、上昇する可能性を踏まえて4%~5%で計算されています。もちろんこの金利も金融機関によって異なり、「給与所得者は3%・自営業者は5%」と計算する金融機関もあるようです。
連帯保証人の返済能力
住宅ローンの借り入れにあたり、連帯保証人は原則不要です。しかし、以下のケースでは連帯保証人が求められます。
- 収入合算を行う場合
- ペアローンを利用する場合
- 購入物件が共有名義の場合
また、親の土地に住宅を建てるなど、本人以外が所有する不動産を担保設定する場合などにも、所有者の連帯保証が必要なケースがあります。
連帯保証人が必要な場合、連帯保証人の状況についても確認されるのが一般的です。安定した収入を得ているなど、返済能力が高い場合、審査に有利となるでしょう。
信用情報
個人信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)には、申込人が利用しているローンやクレジットカードの申込情報や契約内容、支払状況などが記録されています。個人信用情報機関に延滞履歴や破産等の事故情報が登録されていれば、審査は通りません。事故情報があると5年~10年間は記録が残っている可能性があります。
また、事前(仮)審査の申込みを一度に複数の金融機関にすることも、おすすめできません。なぜなら、信用情報には申込情報も登録されるからです。多くの金融機関で申込みをすると「どこも審査に通らなかったのではないか」「何か問題があるから複数申込んだのではないか」とマイナスイメージを与えてしまう可能性があります。相見積もりとして同時に複数の金融機関に申込むこと自体は問題になりませんが、ある程度申込件数は絞った方が良いでしょう。
本(正式)審査時の審査ポイント
事前(仮)審査の審査ポイントを踏まえたうえで、本(正式)審査特有の審査ポイントについても見ていきましょう。審査には銀行だけではなく、銀行と提携している保証会社の審査も加わるため、かなり厳密に行われます。
申込者の健康状態
多くの金融機関が、「団体信用生命保険に加入できること」を住宅ローンの利用条件としています。健康状態に不安がある方は、加入できるかどうかを窓口で相談してください。保険会社から団体信用生命保険引き受けの回答を得たのちに、本(正式)審査に進む必要があります。
団体信用生命保険の加入が難しい場合には、フラット35のように団体信用生命保険が必須ではない住宅ローンを探すのも方法の一つです。ただし、この場合には、借り入れしている人に万が一のことがあった際は、遺族が債務を引き継ぐことになってしまいます。
物件の担保価値
住宅ローンの場合、借入時に金融機関(住宅ローンの保証会社)は購入物件(土地と建物)に抵当権を設定します。なぜなら、万が一返済できなくなった場合に、物件を競売等で処分して返済に充てる保全となるからです。そのため物件の担保価値は、審査をするうえで非常に重要な判断基準になります。
審査時には、金融機関が独自の評価方法で担保の評価を行います。借入金額と担保価値のバランスが重要なことから、購入物件の評価を慎重に行うのです。担保価値よりも借入金額が少なければ、金融機関は万が一の際に不良債権となるリスクが少ないと考えるでしょう。
物件の建築基準法への適合
物件の担保評価同様、金融機関は法律に適合した物件でないと処分が困難と考えるため、建築基準法や都市計画法に抵触していないかを厳格に調査します。時々ニュースで話題となる不正融資と同じように、金融機関が法律違反の物件に融資をするのはコンプライアンス上問題であり、信用を失うことにもなりかねません。そのため、法律に適合していない物件は融資を受けるのが難しくなります。
また、中古住宅のなかには、建築時に建築基準法に適合していても、その後の法改正により現在の法律では建築確認が取得できない物件(「既存不適格」と呼びます)も少なくありません。このような物件も処分が困難なため、審査に通らない可能性が高くなります。
住宅ローンの審査で必要な書類とは
住宅ローンの申込みの際に苦労するのが膨大な必要書類ですが、これは物件購入資金か建て替えによる建築資金かによっても異なります。
また、金融機関によって、事前(仮)審査・本(正式)審査に必要な書類も異なるため、事前に必要書類の種類や入手先を確認し、スムーズに準備ができるようにしておきましょう。
本人確認書類
- 運転免許証や健康保険証、マイナンバーカード、パスポートなどの原本
- 印鑑
収入に関する必要書類
- 給与所得者の場合:源泉徴収票、住民税決定通知書など
- 個人事業主、法人経営者の場合:確定申告書、納税証明書、法人の決算書(過去3年分)
不動産会社から入手する必要書類
- 売買契約書(土地や建物購入の場合)
- 重要事項説明書(土地や建物購入の場合)
- 工事請負契約書(建物新築・増改築の場合)
- 建築確認通知書、建物検査済証(建物が伴う場合)
- 物件情報(パンフレット・チラシ)
- 住宅案内図や住宅地図 ・建物間取り図、立面図、配置図など
法務局・市町村役場等で入手する書類
法務局
- 不動産登記簿謄本(土地・建物)
- 公図・地積測量図(土地)
- 建物配置図・建物平面図(建物)
市町村役場
- 住民票(同居家族全員記載、個人番号不要、本籍地不要)
- 固定資産税納税証明書、納付書(建物建築・増改築や借り換えの場合)
- 印鑑証明書
その他該当する場合に必要になる書類
このほかにも、該当する場合に必要になる書類がいくつかあります。
借り入れを予定している住宅ローン以外にも借り入れがある場合や、住宅ローンの借り換えの場合、既存借り入れの返済予定明細書や残高証明書などの書類が必要です。また、諸費用を含めて借り入れをする場合には、諸費用明細書を提出しなければなりません。
金融機関によっては、預金通帳などの自己資金の保有を証明する書類の提示を求められる場合があります。連帯保証人を設定する場合には、連帯保証人の本人確認書類や所得証明書なども必要です。
新築と中古での住宅ローンの審査の違い
新築と中古住宅でローンの条件が異なることは基本的にありませんが、留意すべきポイントはいくつかあります。それぞれのポイントについて見ていきましょう。
新築住宅の審査
新築住宅の審査では「年収」「年齢」「勤続年数」により「安定した収入が得られるかどうか」という点が重要です。なかには、「年収100万円以上」「年収300万円以上」など、年収に下限を設けているところもあります。また、「勤続年数1年以上、自営業者や会社経営者は営業年数が3年以上」などを条件とする金融機関もあるため確認が必要です。
先ほど、「完済時の年齢は80歳前後という金融機関が多い」と解説しましたが、80歳まで住宅ローンを返済していくことは現実的ではありません。そのため、申込み時には「退職金で完済できるのか」「定年後何歳まで働くことができるのか」も踏まえたうえで、返済期間を検討することが必要です。
中古住宅の審査
中古住宅の場合は、先に説明した「建築基準法に適合するか」「既存不適格とならないか」なども含め、金融機関は厳格に調査を行うのが一般的です。中古物件となると、経過年数に応じて建物の価値が減少したり、価値が出なかったりします。そのため、場合によっては土地のみの価値で担保を評価することもあります。
また、中古物件の場合は、住宅ローン返済中に修繕費用や建て替えが必要となることも予想されるため、審査が厳格になります。場合によっては、審査日数が通常よりも多くかかることもあるので考慮しておきましょう。
住宅ローンの審査に落ちる理由と対策
住宅ローンの審査に落ちる事例を紹介します。また、落ちないために、どのような対策が可能なのかも見ていきましょう。
審査に落ちる理由
信用情報に金融事故の記録がある
個人信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)に金融事故の登録があると、審査に通ることが難しくなります。カードローンやクレジットカードなどは本人が遅れたことに気が付かないこともあるので、注意が必要です。携帯電話の割賦料金も対象になります。
消費者金融の借り入れや過去に返済の遅延がある
過去に返済が遅れていても現在は遅れがないという場合は、問題とならないことも多いようです。しかし、個人信用情報機関には消費者金融の情報も登録されているので、消費者金融のように高い金利の借り入れを利用していることは、たとえ遅れがなくとも審査ではマイナスイメージを与える可能性があります。
税金を滞納している
税金を納める必要がない(非課税)場合には問題にはなりませんが、税金の滞納があると審査は通りません。サラリーマンの場合は、税金は源泉徴収され会社が納めるので滞納することはありませんが、個人事業主の場合は納税証明書の提出を求められるので覚えておきましょう。
申込内容に虚偽がある
申込内容に虚偽が発覚すれば、審査通過は困難です。審査を有利にしたいがために収入を多く申告したり、勤続年数を偽ったりすることは決して行ってはいけません。これらは、審査時に提出する源泉徴収票などの資料から正しい内容がわかります。既存の借入状況についても、個人信用情報機関への照会で判明します。
審査通過に向けてできる対策
頭金を用意する
頭金をできるだけ用意して借入金額を少なくすれば、毎月の返済額も少なくなり、返済負担率が低下します。借入金額と物件の担保価値の差が少なくなったり、借入金額よりも物件の担保価値が上回っていたりすれば、審査は通りやすくなるでしょう。
借り入れを整理する
不要なカードローンやクレジットカードも利用する予定がなければ、住宅ローンを申込みする前に解約しておくのも一つの方法です。他社の借り入れも整理できるものは整理しておけば、返済負担率の低下につながります。信用情報機関の履歴が心配な方は、自分で信用情報機関に開示を申込めば信用情報を確認できるので、念のため確認しておくのも良いかもしれません。
複数の金融機関に申込む
住宅ローンの審査基準は、金融機関によって異なります。そのため、同じ申込条件であっても、申込先によって審査に落ちる可能性や、減額での承認となることも少なくありません。
自分に合った条件で住宅ローンを借り入れるには、複数の金融機関に仮審査を申込むことが有効です。仮審査の複数申込は、2社~3社であれば問題ないとされています。ただし、本審査の複数申込は審査通過率が下がってしまうため、本審査は1社に絞りましょう。
団信に加入できない場合の対処法を知っておく
団体信用生命保険(団信)の加入が条件となっている住宅ローンでは、健康上の問題で加入できない場合、審査で落ちてしまいます。しかし、健康状態に問題がある場合でも、以下の方法で住宅ローンを組むことが可能です。
- 団信なしでフラット35に加入する
- ワイド団信に加入する
- 配偶者を契約者として申込む
ワイド団信は、一般の団信よりも加入要件が緩和されている商品です。金利が上乗せされますが持病の種類によっては加入できるため、選択肢として覚えておきましょう。すべての金融機関がワイド団信を扱っているとは限りませんが、近年では複数の団信を選べる金融機関があります。
金融機関によっては、団信の事前(仮)審査も受け付けています。健康状態に不安がある場合は、金融機関の事前(仮)審査に申込む際に、団信の事前(仮)審査を相談すると良いでしょう。
まとめ
住宅ローンの審査は、事前(仮)審査から始まり、本(正式)審査の2段階が一般的です。審査の結果が出るまで、事前(仮)審査は3日~4日程度、本(正式)審査は2週間程度かかるので、余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。事前(仮)審査で重視されるポイント、本(正式)審査で重視されるポイントをそれぞれ踏まえて、万全の準備をしましょう。
住宅ローンの選び方「イー・ローン」
新築や中古の住宅購入、借り換えなどで住宅ローンを利用したいと考えた場合、「イー・ローン」でチェックしてみましょう。ランキングでは、「総合」「適用金利」「アクセス数」「申込数」の4つの基準で検討することが可能です。人気の住宅ローンの金利比較も簡単にすることができ、便利な機能が満載。住宅ローンを考えるなら、日本最大級のローンデータベース「イー・ローン」のランキングを参考にしてみてはいかがでしょうか。
文/三浦 雅也