住宅ローンは返済期間が長期におよぶことから、何歳まで借り入れができるのか、自分の年齢で組んでも大丈夫なのか、気になる方は多いのではないでしょうか。
おおよそ65歳~70歳以下なら住宅ローンの年齢条件を満たす金融機関はあるようです。また、完済時の年齢は80歳までとしている金融機関が大半です。
この記事では、住宅ローンを組める年齢や、住宅ローンを早めに組むメリットと注意点を解説します。45歳以上で住宅ローンを組むメリット・デメリットや、年齢別の返済プランも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
住宅ローンを組める上限年齢は何歳まで?
ここでは住宅ローンの概要を紹介した上で、以下のポイントを解説していきます。
- 各金融機関の年齢制限
- 審査時に年齢がどれだけ考慮されるのか
- 完済時年齢の目安
- 返済期間が最長の35年ローンを組む際の上限年齢
住宅ローンの概要
まず代表的な住宅ローンの種類と金利体系を把握しておくことが大切です。
住宅ローンの種類
民間金融機関の住宅ローン | 銀行や信用金庫が提供 |
---|---|
フラット35 | 住宅金融支援機構と民間金融機関などが協業して提供 |
財形在宅融資 | 住宅金融支援機構や勤労者退職金共済機構などが提供 |
住宅ローンの金利体系
変動金利型 | 金利が一定期間ごとに見直されるタイプ |
---|---|
固定金利期間選択型 | 1年~30年など固定期間中は金利が変わらず、期間終了後に「変動金利」と「固定金利」のどちらかを選択するタイプ |
全期間固定型 | 返済期間中の金利が借入時から変動しないタイプ |
住宅ローンの年齢制限
金融機関で設定されている住宅ローンの年齢制限は、以下が一般的です。
- 借入時年齢:65歳~70歳未満
- 完済時年齢:75歳~80歳未満
都市銀行からネット銀行まで、さまざまな形態の金融機関の設定する年齢制限を次の表にまとめました。
金融機関・住宅ローン | 借入時年齢 | 完済時年齢 |
---|---|---|
三菱UFJ銀行 〈住宅ローン〉 |
70歳未満 | 80歳未満 |
みずほ銀行 〈みずほ住宅ローン〉 |
71歳未満 | 81歳未満 |
三井住友銀行 〈三井住友住宅ローン〉 |
70歳未満 | 80歳未満 |
りそな銀行 〈りそな住宅ローン〉 |
70歳未満 | 80歳未満 |
三井住友信託銀行 〈住宅ローン〈リレープランフレックス〉〉 |
66歳未満 | 81歳未満 |
横浜銀行 〈横浜銀行各種住宅ローン〉 |
返済期間により異なる | 82歳未満 ※3大疾病付団信加入時は76歳未満、ワイド団信加入時は80歳未満 |
千葉銀行 〈ちばぎん"選べる住宅ローンベストチョイス21"「新築・新規購入コース」〉 |
70歳未満 | 80歳未満 |
新生銀行 〈新生銀行各種住宅ローン〉 |
65歳未満 | 80歳未満 |
ARUHI 〈ARUHIフラット35買取型〉 |
70歳未満 ※親子リレー返済であれば70歳以上も利用可 |
80歳未満 |
中央労働金庫 〈ろうきん住宅ローン〉 |
66歳未満 | 76歳未満 |
JAバンク 〈住宅ローン〉 |
66歳未満 | 80歳未満 |
住信SBIネット銀行 〈ネット専用住宅ローン〉 |
65歳未満 | 80歳未満 |
ソニー銀行 〈住宅ローン〉 〈変動セレクト住宅ローン〉 〈固定セレクト住宅ローン〉 |
65歳未満 | 85歳未満 ※ワイド団信利用時は満81歳未満 |
楽天銀行 〈楽天銀行住宅ローン(金利選択型)〉 |
65歳6ヶ月未満 | 80歳未満 |
※2022年12月12日現在の情報に基づきます
金融機関による差は多少あるものの、概ねどの金融機関も同じ年齢帯を上限にしています。
金融機関が融資を行う際に考慮する項目
民間金融機関が住宅ローンの融資時に考慮している審査項目
- 「健康状態」(98.5%)
- 「借入時年齢」(97.1%)
- 「完済時年齢」(98.9%)
- 「担保評価」(97.6%)
- 「勤続年数」(94.5%)
※出典:「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」より、P19「融資を行う際に考慮する項目」(国土交通省 住宅局)[PDF]
国土交通省の調査によれば、95%以上の金融機関がローン審査で年齢を重視していることがわかります。
完済時期は75歳~80歳が上限だが、70歳までを目安に
ほとんどの金融機関は住宅ローンの完済時年齢を75歳~80歳未満に設定していますが、上限年齢はあくまでローンを組む際の条件です。
金融機関が年齢を重視するのは、健康や収入面などによる不安を考慮してのことです。借入時は健康で収入があっても、病気になったり定年を迎えたりすれば、今まで通りの生活を維持することはできません。完済時年齢を高く設定すると、ローン破綻のリスクも高くなることになります。
そのため、完済時年齢の上限が80歳になっている場合も、もしもの返済破綻リスクを考慮し、最長でも70歳までに完済できるローンをおすすめします。
35年の住宅ローンを組むための上限年齢
返済期間が最長の35年ローンを組む場合、借入時の年齢は以下の計算式で求めます。
(例)80歳-35年=借入時年齢は45歳まで
住宅ローンは年齢が高くなるほど審査条件が厳しくなり、申込みが可能な年齢でも融資を受けられない場合があります。35年返済でローンを組むときは契約時の年齢を考慮し、早めの借り入れを検討してください。
住宅ローンの平均的な借入時の年齢と返済期間とは?
ここでは住宅ローンの平均的な借入時の年齢と返済期間について、具体的に紹介します。
平均的な借入時の年齢
住宅ローン利用者の構成比は30歳代が5割以上を占め、全年代のなかで最も多くなっています。
- 20歳代:9.1%
- 30歳代:54.7%
- 40歳代:28.5%
- 50歳代:7.7%
※参照:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2022年4月調査)」[PDF]
ただし、定年年齢が延びているなどの理由から、40歳代以降の割合は増している傾向にあります。住宅金融支援機構が実施した2018年度の調査によると、住宅ローン利用者の割合は20歳代が12.6%、30歳代が58.0%、40歳代が23.4%、50歳代が6.0%でした。
この結果からも、2022年の調査と比べて、住宅ローンの利用年齢層が上昇傾向にあることがわかります。
※参照:住宅金融支援機構「2018年度 民間住宅ローン利用者の実態調査(第1回)」[PDF]
平均的な返済期間
返済期間は、分譲戸建住宅と分譲マンションともに35年以上が最も多くなっています。まず「35年以上」と回答した構成比は、分譲戸建住宅が79.0%、分譲マンションが71.2%という結果です。
そして、平均返済期間は、分譲戸建住宅が34.1年、分譲マンションが32.0年でした。この結果から、多くの人が住宅ローンの返済に30年以上の期間を設けていることがわかります。
なお、物件価格の平均は分譲戸建住宅が4,250万円であるのに対し、分譲マンションは4,929万円と、679万円高くなっています。
※参照:国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査」[PDF]
住宅ローンを早めに組むメリット・注意点
ここでは住宅ローンを早めに組むメリットと注意点や、ローンを組むときに活用したい制度についても紹介しますので、参考にしてください。
住宅ローンを早めに組むメリット
住宅ローンを早めに組む場合のおもなメリットは、以下の3つです。
- 返済期間を長期とすることが可能で月々の返済額を少なくしやすい
- 教育費や老後資金などの計画を立てやすい。
- 生涯の家賃負担を少なくできる
住宅ローンを早めに組めば、年齢制限を気にせずに長期の借り入れがしやすくなります。返済期間を長くすれば、その分、月々の返済負担を抑えられるため、教育費や老後資金の準備もしやすくなるでしょう。
また、早くに住宅を購入することで、生涯で支払う家賃負担も少なくなります。いずれ住宅購入を考えているのであれば、住宅ローンを早めに組むメリットは大きいでしょう。
住宅ローンを早めに組む上での注意点
住宅ローンを早めに組むときは、以下の点に気をつけましょう。
借入金額を無理のない範囲にする。
実際に借入可能な金額と無理なく返済していける金額は違います。特に若い方は、長期返済で多額のローンを組むことができるため気をつけましょう。
無理のない返済金額は各家庭の収入や貯蓄状況によっても異なりますが、一般的には手取り収入の20%程度が理想です。
総務省の家計調査でも、住宅ローン返済世帯の返済負担率は、手取り収入の18%程度となっています。
※出典:「家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表」(総務省)[PDF]
3大資金を考慮する
安定したローン返済を続けるには、住宅資金以外の教育資金、老後資金も含めた人生の3大資金を考慮した返済計画を立てるようにしましょう。
子ども1人が大学を卒業するまでにかかる教育費の目安は、すべて公立に進学した場合でも約1,000万円。また夫婦がゆとりある老後を過ごすための必要貯蓄額の目安は、1,300万円~2,000万円です。
教育費の目安
幼稚園から高校までの学習費(574万円)は、「令和3年度 子供の学習費調査」(文部科学省)を参照。国公立大学の学費(481.2万円)は、「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」「日本政策金融公庫」を参照
老後資金の目安
「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書(金融庁)」より、高齢夫婦無職世帯が20年~30年生きると仮定した場合に必要な貯蓄の取り崩し額を参照
もちろん教育費や老後資金の必要額は各家庭によって異なるため、一概には言えません。
上記の目安を参考に、必要な額を考え、それぞれをバランスよく準備できるようにしてください。
頭金とのローンのバランスを適切にする
頭金を多く入れると利息分の支払いを抑えることができますが、そのせいで手持ちの資金が少なくなっては今後の生活が不安になります。ある程度の資金は手元に残しておきましょう。
ローンを組むときに活用したい制度
住宅ローン契約時には、以下のような各種制度も活用できます。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
住宅ローンの「年末借入残高」に応じて、毎年の税金を10年間~13年間軽減できる税額控除制度で、節税効果が非常に高くなります。
法改正に伴い、居住の用に供した年や認定住宅に該当するかで、期間や金額が異なるため、国税庁のホームページから最新情報を確認しましょう。
- 国税庁:No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)[PDF]
財形貯蓄制度(企業の福利厚生)
勤務先が財形貯蓄制度を導入していれば活用でき、一定額の住宅資金を非課税で貯められる「財形住宅貯蓄」や、住宅金融支援機構から低金利の融資を受けられる「財形住宅融資」を利用できます。
45歳以上で住宅ローンを組む場合のメリットとデメリット
ここでは、45歳以上で住宅ローンを組む場合のメリットとデメリットについて解説します。
45歳以上で住宅ローンを組むメリット
45歳以上で住宅ローンを組む場合、20歳代や30歳代の若い年代に比べて、頭金を多く用意できる点が挙げられます。
45歳以上で住宅ローンを組むデメリット
45歳以上で住宅ローンを組むデメリットとして、35年ローンを利用できない可能性が高い点が挙げられます。
というのも、金融機関の多くは完済時年齢の上限を「80歳未満」で設定しており、35年ローンを組める上限年齢が44歳となるためです。
また、住宅ローンの契約時は、原則として団信(団体信用生命保険)の加入が必要ですが、加入者の健康状態によっては審査に通らないことがあります。
団信への加入が必須ではないフラット35のような住宅ローンがあるとはいえ、万一の際には、遺族に住宅ローンの負担がかかる点に注意しなければなりません。
さらに、45歳以上だと退職までの期間が短いため、退職後のローン返済のプランを考えておく必要もあります。退職金や年金をあてにしすぎると、老後の生活費を圧迫しかねないため、余裕を持った計画立てが重要といえるでしょう。
積極的に繰り上げ返済をすることがポイント
退職後のローン返済による負担を減らすためには、少額でも繰り上げ返済を行うことが大切です。繰り上げ返済の方法には、返済期間を短縮できる「期間短縮型」と、毎月の返済額を減額できる「返済額軽減型」の2種類があります。
特に、期間短縮型の場合は支払期間を短縮できるため、利息を減らす効果も期待できるでしょう。
親子ローンやシニアローンの選択肢も
45歳以上で住宅ローンを組む際は、親子ローンやシニアローンの選択肢もあります。例えば、定年前後に住宅を購入する場合、子ども世帯との同居を前提とした「親子ローン」の利用が可能です。
親子ローンには、親が返済して子どもに引き継ぐ「親子リレーローン」と、親子で同時に返済する「親子ペアローン」の2種類があり、ニーズに応じてどちらかを選べます。
また、60歳以上の方の場合、シニアローンとして「リバースモーゲージ型住宅ローン」を活用すれば、自宅を担保に融資を受けられます。毎月の返済は利息のみに抑えられ、万一、契約者が亡くなった場合は物件の売却、もしくは現金での一括返済を選択可能です。
住宅ローンの収入合算と、ペアローンについても把握しておきましょう。収入合算とは、連帯保証人になる親族の収入を、主債務者の収入に合算した上でローン審査を受ける方法です。
一方、ペアローンとは、同居親族とともに主債務者としてローンを組む方法で、それぞれお互いが連帯保証人になります。
例えば、夫婦間で収入の差がある場合は収入合算を選択し、夫婦ともに一定収入がある場合はペアローン選択するなど、契約方法はケースバイケースで選べます。
【年齢別】住宅ローンの返済シミュレーション
住宅ローンを組むときは年齢を考慮し、適切な返済プランを立てることが大切です。ここでは、年齢別の理想的な住宅ローン返済シミュレーションをご紹介していきます。
「自分の年齢ではどれくらい借り入れしてもいいのか、どのような返済プランを立てればいいかわからない」という方は参考にしてください。
30歳・40歳代の返済プラン
- 前提条件:借入金額3,000万円/返済期間35年/金利 年1%/元利均等返済/ボーナス払いなし/借入時年齢35歳/ローン完済時年齢70歳
- 人物像:乳幼児~小学生の子供がいるが収入はまだそれほど高くない。妻はパートに出て共働きをしている。将来の教育費が気がかり。
- 毎月のローン返済額:約8.5万円
- ローン返済総額: 約3,557万円
30歳~40歳代はまだ子供が小さく、工夫次第で教育費の負担を抑えられる年代です。本格的に支出が増える前に35年ローンでこつこつローン返済しながら、教育費や老後資金の貯蓄に注力しましょう。
50歳代の返済プラン
- 前提条件:借入金額1,800万円(頭金1,200万円済)/返済期間25年/金利 年1%/元利均等返済/ボーナス払いなし/借入時年齢50歳/ローン完済時年齢75歳
- 人物像:中学生~大学生の子供がいる。役職がつき、収入も貯蓄額も大幅にアップしたものの、教育費の負担も増えている。
- 毎月のローン返済額:約6.8万円
- ローン返済総額:約2,036万円
50歳はローン審査が厳しくなり、35年の住宅ローンも借りられなくなる年齢です。収入も貯蓄もそれなりにある年齢でもあるため、頭金を多めに入れて借入金額を調整しましょう。
借入金額を少なくしてできる限り毎月の返済額を抑え、大学進学という教育費のピークにそなえることが大切です。
60歳代の返済プラン
- 前提条件:借入金額1,200万円(頭金1,800万円済)/返済期間15年/金利 年1%/元利均等返済/ボーナス払いなし/借入時年齢60歳/ローン完済時年齢75歳
- 毎月のローン返済額:約7.2万円
- ローン返済総額:約1,293万円
- 人物像:子供が独り立ちし、夫婦だけの生活になった。定年後も再雇用制度などを利用し働く予定で、働き方や退職金の運用方法を模索している。
60歳は定年に差しかかる年齢ということもあり、ローンの審査はさらに厳しくなります。審査通過や安定した返済を叶えるためにも、老後の資金や収入源をしっかり確保した上で、借り入れを検討してください。
また応用編にはなりますが、最近では「住宅ローン控除」を適用させるために、貯蓄はあるものの、あえて住宅ローンを組む人もいます。低金利な今だからこそできる節税対策と言えます。
まとめ
住宅ローンはおおよそ65歳~70歳まで組める金融機関が一般的です。また、完済時年齢も大半が80歳に設定しています。
しかし、年齢が上がるほど完済時年齢があがり、ローン審査は厳しくなるので、長期ローンを利用する場合でも、70歳までに完済できる借り入れをおすすめします。
比較的若いうちに住宅ローンを組めば、返済方法や商品の選択肢も広がります。住宅ローン減税などの制度を活用し、借入時の年齢に適したローンを組んでください。
文/金子 賢司