マイホームを購入するとき、多くの場合で住宅ローンが利用されています。その際、一定の要件を満たし住宅ローン控除(減税)の適用になれば、税負担を軽減することができます。
2022(令和4)年の税制改正により、住宅ローン控除(減税)制度を利用できる期限が延ばされました。
この記事では、住宅ローン控除(減税)を受けられる期間や適用要件を解説します。また、住宅ローン控除(減税)の申請方法や必要書類も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
住宅ローン控除(減税)の適用期限が延長
2022(令和4)年度の税制改正によって、住宅ローン控除(減税)の適用期限が延長されました。ここでは、住宅ローン控除(減税)の概要や制度を利用できる期間、税制改正の理由について解説します。
住宅ローン控除(減税)とは
住宅ローン控除(減税)とは、住宅ローンの返済にともなう家計の負担を減らし、マイホームを無理なく確保できるよう設けられた制度です。
正式な名称は「住宅借入金等特別控除」で、要件を満たした場合、年末時点の住宅ローン借入残高に応じた金額が所得税や住民税から控除されます。
住宅ローン控除(減税)は2025(令和7)年まで適用可能に
税制改正前、住宅ローン控除(減税)の適用期限は2021(令和3)年まででしたが、2022(令和4)年度の税制改正によって、期限が4年間延長。2025(令和7)年12月31日までに入居した者が対象になりました。
住宅ローン控除(減税)の適用期限延長の理由には、新型コロナウイルスの感染拡大によって低迷した経済状態の回復や、環境性能に優れた住宅の普及が挙げられます。
また、税制改正にともない、これまで年末時点での住宅ローン借入残高に対して1%だった控除率が0.7%に変更されました。控除率が引き下げられた理由は「逆ざや」の解消です。
住宅ローン控除(減税)における逆ざやとは、ローン返済で支払う利息より、住宅ローン控除(減税)による節税額のほうが多くなる現象を指します。会計検査院が逆ざやについて指摘したことで、控除率が見直されました。
住宅ローン控除(減税)の控除額を計算する方法
住宅ローン控除(減税)の控除額は「年末時点の住宅ローン借入残高×0.7%」で計算できます。
ただし、控除される期間は住宅の種類ごとに異なるため注意が必要です。控除期間については次項で詳しく説明します。
また、控除額には、購入した住宅の種類や入居のタイミングによって上限が設けられています。控除額を計算するために使う、年末時点の借入残高にも上限がある点を押さえておきましょう。
年末時点の借入残高の限度額を以下に挙げます。
2022(令和4)年~2023(令和5)年に入居 | 2024(令和6)年~2025(令和7)年に入居 | |
---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 ※2023(令和5)年末までに新築の建築確認を受けた住宅への入居の場合は2,000万円 |
2022(令和4)年~2025(令和7)年入居 | |
---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 |
住宅ローン控除(減税)の控除期間はどれくらい?
従来の住宅ローン控除(減税)では、控除期間は原則10年で、特例措置が適用されるケースのみ13年でした。しかし、税制改正後の住宅ローン控除(減税)では、住宅の種類によって控除期間が定められています。
新築住宅と買取再販の中古住宅(要件あり)は13年
税制改正後の住宅ローン控除(減税)では、新築住宅と買取再販(不動産会社が買い取り、再販したもの)の中古住宅については、原則13年間控除されます。
ただし、買取再販の中古住宅については、いくつかの要件を満たすことが必要です。要件には、宅地建物取引業者の住宅取得から、一定の増築・リフォーム工事後の再販までの期間が2年以内であることなどが定められています。
また、新築住宅でも、入居が2024(令和6)年~2025(令和7)年の場合、定められた環境性能や認定住宅に該当しないケースでは、控除期間は10年間です。このようなケースで住宅ローン控除(減税)を利用するには、2023年(令和6)年末までに新築の建築確認を受ける必要があります。
中古(既存)住宅は10年
買取再販ではない中古住宅の場合、住宅ローン控除(減税)の控除期間は10年間です。例えば、不動産会社の仲介によって、個人が売り主である中古住宅を購入するケースが該当します。
なお、中古住宅の控除期間については、住宅の環境性能による違いは設けられていません。
住宅ローン控除(減税)の適用要件とは
住宅ローン控除(減税)を受けるための適用要件を、おもな3つのケースに分けて解説します。
ケース1. 新築住宅
新築住宅の住宅ローン控除(減税)のおもな適用要件は以下のとおりです。
- 住宅ローンを返済する期間が10年以上であること
- 住宅ローン控除を受ける人自身が、住宅の引き渡し日または工事完了日から6ヵ月以内に居住開始すること
- 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで居住を続けていること
- 住宅ローン控除を受ける年の所得の合計金額が2,000万円以下であること
- 住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上が居住用であること(特例適用の場合は、床面積40平方メートル以上50平方メートル未満、年間の合計所得1,000万円以下)
- 居住の開始年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税特例が適用されていないこと
ケース2. 中古住宅
中古住宅の住宅ローン控除(減税)を受けるには、新築住宅の要件に加えて以下の2つを満たす必要があります。
- 建築後に使用された住宅であること
- 1982(昭和57)年1月1日以降に建築された住宅であること
1981(昭和56)年以前に建築された中古住宅の場合は、現行の耐震基準適合の証明が必要です。
ケース3. 増築・リフォーム
増築やリフォームを行なった場合に住宅ローン控除(減税)を利用するには、新築住宅の適用要件とともに以下の要件と工事に該当する必要があります。
- 住宅ローン控除を受ける本人が所有し、居住している住宅の増築・リフォームであること
- 工事費用が100万円を超え、費用の2分の1以上が居住用部分の工事費用であること
適用される工事の種類は以下のとおりです。
- 増改築、建築基準法で定める大規模な修繕または大規模な模様替え(壁・柱・床・はり・屋根・階段のいずれか1つ以上)の工事
- マンションの所有部分の床・階段・壁の半分以上について行なう一定の修繕・模様替えの工事
- 家屋・マンションの所有部分のうち、リビング・キッチン・浴室・トイレ・洗面所・納戸・玄関・廊下の1室の床または壁の全部について行なう修繕・模様替えの工事
- 現行の耐震基準への適合を目的とする耐震改修工事
- 一定のバリアフリー改修工事
- 一定の省エネ改修工事
- 給水管、排水管又は雨水の浸入を防止する部分に係る修繕又は模様替え
住宅ローン控除(減税)の申請の流れと必要書類
住宅ローン控除(減税)を受ける1年目は、入居した翌年の確定申告によって申請を行ないます。通常は確定申告を行なわない会社員の場合でも、住宅ローン控除(減税)を受ける1年目は確定申告が必要です。
確定申告の時期は、毎年2月中旬から3月中旬までとなっています。
住宅ローン控除(減税)の申請の必要書類
住宅ローン控除(減税)を申請する確定申告の必要書類を以下に挙げます。
- 確定申告書
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- マイナンバーの記載書類
- 土地・家屋の登記事項証明書
- 不動産売買契約書
- 工事請負契約書の写し
- 住宅ローンの年末借入残高等証明書
- 住宅性能を証明するための書類
住宅ローン控除(減税)の申請の流れ
住宅ローン控除(減税)を申請する一般的な流れを紹介します。
1. 必要書類の用意
住宅ローン控除の申請に必要となる書類を、不備のないように集めます。
2. 確定申告書の記入・提出
「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」をもとに控除額を計算し、確定申告書に記入します。記入の完了後、確定申告書と必要書類を税務署に提出しましょう。
3. 還付金の振り込みを確認
住宅ローン控除の申請を不備なく行なった場合、書類に記入した口座に還付金が振り込まれます。申請から還付金の振り込みまでの期間は約1ヵ月です。
住宅ローン控除(減税)の手続きは、毎年行なう必要があります。しかし、2年目以降は1年目よりも比較的容易にできるでしょう。
会社員の場合、2年目以降の住宅ローン控除(減税)の手続きは年末調整で行なうことが可能です。税務署から送られる「住宅借入金等特別控除申告書」や「住宅借入金等特別控除証明書」、金融機関から送られる「住宅ローンの年末借入残高等証明書」を、勤務先に提出してください。
個人事業主の場合は、年末調整を行なわないため2年目以降も確定申告が必要です。ただし、必要書類は1年目よりも少なくなり、通常の確定申告にいくつか手間を加えるだけで手続きできます。
申請し忘れた場合は?
住宅ローン控除(減税)の申請は、入居した翌年の確定申告での実施が必要です。ただし、申請を忘れてしまった場合でも、会社員・個人事業主それぞれに行なえる対応があります。
会社員の場合
給与所得のみの会社員の場合、控除の1年目に申請しなかったとしても、還付申告として住宅ローン控除(減税)を申請できます。ただし、さかのぼって申告できるのは5年間となっているため、可能な限り迅速に申請しましょう。
2年目以降の年末調整による住宅ローン控除(減税)の手続きを忘れた場合、1月末までは修正できるので、勤務先への相談がおすすめです。1月末までに修正できなかったときには、1年目と同様の確定申告によって控除を受けられます。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、住宅ローン控除(減税)を申請せずに確定申告をしたときには、さかのぼって還付を受けられないのが原則です。しかし、更正の請求によって還付を受けられる可能性があります。
更正の請求とは、確定申告の期限が過ぎたあとに申告内容の誤りを発見したり、確定申告しなかったりした場合に、訂正を求める手続きです。
住宅ローン控除(減税)が認められるかどうかは税務署の判断に委ねられるため、まずは最寄りの税務署に相談しましょう。
住宅ローン控除(減税)利用時の注意点
住宅ローン控除(減税)を利用する際に、注意しておきたいポイントを2つ紹介します。
ふるさと納税との併用は限度額に注意が必要
ふるさと納税と住宅ローン控除(減税)の併用は可能ですが、ふるさと納税の控除限度額が下がる場合があるため注意しましょう。
基本的に、住宅ローン控除(減税)は所得税が控除される制度です。しかし、所得税から控除しきれないときには住民税からも控除されます。住民税が減った場合、ふるさと納税の控除限度額が下がることを理解しておきましょう。
ほかの特例と併用できないケースもある
住宅ローン控除(減税)と、買換え特例や3,000万円控除の併用はできないケースが多い傾向です。
入居の年とその前2年間・その後3年間の合計6年間に、買換え特例や3,000万円控除を受けた場合は、住宅ローン控除(減税)を利用できません。
住宅ローン控除(減税)とほかの特例のどちらを利用すべきかは個々のケースによって異なるため、慎重に検討しましょう。
まとめ
住宅ローン控除(減税)は、要件を満たせば借入残高に応じた金額が所得税や住民税から控除される制度です。そのため住宅ローンの返済にともなう家計の負担軽減を期待できます。
住宅ローン控除(減税)を受けるには、入居の翌年の確定申告での申請が必要です。必要書類を不備なく用意して、忘れずに申請しましょう。
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文/赤上 直紀