子供の教育資金は、人生の三大資金の一つといわれるほど大きなものです。子供が生まれてすぐに、貯蓄や保険で教育費を準備している方も多いでしょう。
お金の準備が間に合わず、子供の進路を狭める事態はできるだけ避けたいものです。お金が足りないという状況に陥らないためにも、教育費を積み立てておき、必要に応じて教育ローンなどの資金を活用しましょう。
教育ローンには、民間の教育ローンと国の教育ローンの2種類があります。教育ローンの特徴や審査基準を知って万全に準備しておきましょう。
今回は、民間金融機関における教育ローンを中心に、教育ローンの特徴や審査基準、必要書類、手続きの流れなどを解説します。子供のためにも、早めに準備しておきましょう。
教育ローンは2種類ある!
教育ローンは目的別ローンの一つで、高校や大学などの入学資金・授業料から海外留学費用、各種専門学校にかかる費用までを広くカバーしています。
教育ローンは、民間金融機関の教育ローンと国の教育ローンの2種類に分かれています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
民間の教育ローン
教育ローンは、銀行や信用金庫、労働金庫など多くの民間金融機関で取り扱われています。
民間の教育ローンには、お金の使い道の自由度が高く、融資実行までの期間が短いといったメリットがあります。一方で、国の教育ローンと比べて金利が高めである点がデメリットです。ローンの内容や条件は金融機関によって異なるため、複数の商品を比較して利用を検討すると良いでしょう。
また、民間の教育ローンは無担保無保証人が一般的ですが、医学部などに進学し学費が高額になる方向けに、低金利で融資限度額が大きい有担保の教育ローンを取り扱う金融機関もあります。利用したい金額に合わせて商品を選ぶと良いでしょう。
保証人を不要とする代わりに、金融機関が指定する保証会社の保証が受けられることを条件とする金融機関がほとんどです。保証料は金利に含まれており、金融機関から保証会社へ支払うのが一般的です。借り入れの際は、保証料にも注目すると良いでしょう。
借入形態は、証書貸付方式による「一括借入」タイプと、当座貸越方式による「極度型」タイプがあります。
「一括借入」タイプは、必要な金額を一括で借り入れし、住宅ローンのように毎月決まった日に決まった金額を返済していくオーソドックスな借入形態です。
「極度型」タイプは、借入枠(極度額)を設定し教育資金が必要になった都度、必要な分だけ借り入れる方法で、極度額の範囲内であれば何度でも審査不要で簡単に融資を受けられます。
入学資金や授業料だけを一度で借り入れるなら「一括借入」タイプ、大学4年間の学費や授業料の支払いなどに、何度も借り入れを必要とするなら「極度型」タイプが便利です。必要に応じて使い分けるのが良いでしょう。
また、民間の教育ローンを利用する場合は、借入時期を見極めることも大切です。秋は進学や受験の方向性が決まってくるタイミングのため、金利割引キャンペーンを行なう金融機関が多く、教育ローンの申込み時期に向いています。
国の教育ローン
国の教育ローンとして広く知られているものに、日本政策金融公庫の融資制度「教育一般貸付」があります。
教育一般貸付は、民間の教育ローンと比べて金利が低く、固定金利となっており、返済期間は最長18年と一般の金融機関よりも長期になっています。申込みには世帯年収(所得)の上限額の設定がある点、借り入れまでに時間がかかる点に注意しましょう。
また、教育一般貸付は、連帯保証人(1名以上)または公益財団法人 教育資金融資保証基金による保証が必要です。
教育資金融資保証基金は、債務者がローンを返済できなくなってしまった場合、債務者に代わって返済を保証する機関です。連帯保証人を用意できない方は、教育資金融資保証基金を利用しなければなりません。
教育資金融資保証基金を利用するには、事前の申込みと保証料の支払いが必要です。保証料は返済期間や返済金額などによって異なり、借入金から一括で支払います。必要な書類を確認し、早めに準備しておきましょう。
教育ローンの審査基準とは
教育ローンの一般的な審査のポイントを見てみましょう。
年齢
教育ローンには、年齢制限が設けられている場合があります。金融機関によって多少の前後はありますが、申込み年齢を満18歳以上満65歳未満としている金融機関が多くなっています。
ローンの対象年齢になっていない場合は、保護者などが本人に代わって借り入れを行なうことになるでしょう。
勤務先・雇用形態・勤続年数・年収
倒産リスク、転職リスクも収入の安定性を判断するうえで重要なポイントです。
パート・アルバイト・年金収入のみの方などは取り扱いを不可とする金融機関、年収200万円以上や勤続年数1年以上などを条件とする金融機関もあります。共通していえるのは「安定した収入」を審査のポイントに置いているということです。民間の金融機関では、年収が高いほど審査に有利だといえるでしょう。
一方、国の教育ローンでは、扶養している子供の人数に応じて世帯年収(個人事業主は所得)の上限額が設けられているのが特徴です。
例えば、子供1人の場合は世帯年収790万円(所得600万円)、子供2人の場合は世帯年収890万円(所得690万円)などの上限があります。世帯年収が上限額を上回ると申込みができない場合があるため注意しましょう。
なお、世帯年収が200万円以内の場合には優遇制度があります。
他社借入件数・借入総額
教育ローンに限らず、他社の借入件数や借入総額が多ければ、返済能力という点で審査は不利になるおそれがあります。世帯収入が多かったとしても、他社での借入金額が収入に見合わないほど大きいと、返済能力が低いと判断されてしまうのです。
他社で資金を借り入れている場合は、借り入れの件数や総額を確認しておき、可能な限り借入残高を減らしておく必要があるでしょう。
教育ローンの審査の必要書類と流れ(時間)
教育ローンは審査に1~2週間程度かかることもありますが、金融機関によっては最短で申込みの翌日に回答をもらえる場合もあります。各金融機関はスピーディーな審査を心がけていますが、融資が実行されるまでには1~2週間程度の余裕を見ておくのが無難といえます。
教育ローンの対象
教育ローンは学費以外にも、以下のようなさまざまな教育関連費用に利用できます。
教育ローンの対象となる費用
- 入学金
- 教材費(教科書・参考書など)
- 制服
- 交通費
- 住宅費(家賃など)
- 受験料
ローンの対象は金融機関によって異なり、海外留学費用や渡航費用・滞在費用をローンの対象としているところもあります。ローン申込みの際に、自分の目的に合った利用が可能か、必ず確認しておきましょう。
教育ローンの審査の必要書類
申込みの際には、事前に以下の書類を準備します。
- 本人確認資料(運転免許証、パスポートなど)
- 健康保険証など、勤務先の勤続年数を確認できるもの
- 収入証明書(源泉徴収票・住民税課税決定通知書など)
- 在学、進学の確認資料(学生証や合格通知書)
- 使い道が確認できる書類(パンフレットや学校納付金の振込依頼書など費用の記載があるもの、授業料の納付書など)
- 通帳、通帳の印鑑
- その他(借り換えの場合には他社教育ローンの借入残高がわかる書類など)
支払後2ヵ月以内など、費用を先に立て替えて支払った場合でも、支払領収書の提出により教育ローンが利用できる金融機関もあります。
また、個人事業主や法人の役員の場合には確定申告書や決算書など、必要に応じて追加書類を求められることもあります。
教育ローンの申込みから入金までの一般的な流れ
インターネット上で簡単に申込みできる金融機関が多いため、申込み自体はそれほど難しくありません。金融機関によっては、手続きが多少異なることがありますので、事前に申込みする予定の金融機関へ確認しておきましょう。
1.申込み・仮審査
インターネットやファックスの利用により簡単に申込みができます。
2.仮審査結果の通知
電話や電子メールなどで、1~3営業日程度で審査結果が通知されます。
3.本審査・契約
必要書類を準備して窓口に行きます。来店は一度で済むことが一般的です。最近は、インターネットを利用して来店不要で契約ができる金融機関も増え、利便性が向上しています。
4.入金(借り入れ・支払いの手続き)
正式な審査結果(ローンの借入金額・金利やその種類、借入方法や返済方法)を通知後、返済用口座に資金が振り込まれれば、手続き完了です。銀行が直接支払先に振り込む場合もあります。
返済口座を持っていない人は、借り入れをする金融機関で返済用口座を開設する必要があるため、必要書類を準備しておきましょう。
教育ローンの審査を受けるときのポイント
教育ローンの審査を受けるときは、以下の2つのポイントに注意しましょう。
収入に見合った借入金額にする
年収に対する返済比率は20%~30%に抑えることが大切です。収入に見合わない額を借り入れようとすると、返済比率が大きくなって、返済能力があるか疑問を持たれてしまいます。仮に審査を通過しても、毎月の返済で生活が苦しくなってしまうでしょう。
マイカーローン、住宅ローンなどの返済がある場合は、それらも考慮したうえで、借入金額や返済計画を決めてください。
返済能力を証明できるか
返済能力があるかどうかは、審査における重要なポイントの一つです。審査時は、年収、既存の借入状況、信用機関情報の登録内容などから、返済能力があるかを判断されます。
他社で借り入れていると、審査に通りづらくなってしまうため、できる限り他社からの借り入れはなくしておきましょう。また、延滞履歴がある場合も、返済能力に問題があると判断されてしまいます。返済遅れが発生しないよう日頃から注意することが大切です。
教育ローンの審査に通らないときにはどうすれば良い?
教育ローンの申込みをしても、なかなか審査に通らない場合があります。ここでは、教育ローンの審査に通らない理由と、通らなかったときの対処法を解説します。
教育ローンの審査に通らない理由
教育ローンの審査に通らない原因には、「債務整理(自己破産)の履歴がある」「過去に延滞した履歴がある」「他社借入金額や借入件数が多い」「収入が少ない」といった理由が挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.債務整理(自己破産)の履歴がある
金融機関は、ローンの申込み情報や契約内容、支払状況などを信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)に登録します。金融機関は、信用情報機関に申込み者の情報を照会して審査するため、他社に借り入れがあることをごまかすことはできません。
個人信用情報機関に自己破産など債務整理の事故情報が登録されていると、審査は通らないでしょう。事故情報は5~10年ほど、記録が残っている可能性があります。
2.過去に延滞した履歴がある
過去に返済を延滞した履歴があると、審査に通らない可能性は高くなります。個人信用情報機関では、開示請求により金融事故の履歴を確認できるため、不安な方は自分自身の信用情報をチェックすることも検討してください。
なお、信用情報機関の情報が消えても、延滞した履歴のある金融機関では過去の取引は記録に残っています。同じ金融機関では二度と借り入れはできないと考えておいたほうが良いでしょう。
3.他社借入金額や借入件数が多い
多重債務者と疑われれば、当然審査は通りにくくなります。
カードローンやキャッシングを利用している場合、たとえ現在は借入残高がなかったとしても、極度額で契約しているため、借入枠を利用していることになってしまうので注意しましょう。また、「いつでも利用できる」「金利が高い借り入れをいつも利用している」と、マイナスのイメージを与えてしまうおそれがあります。できれば、不要なカードローンやキャッシングの契約は事前に解約しておくのが賢明といえるでしょう。
4.収入が少ない(収入がアルバイトやパートのみ)
パート・アルバイトの方を対象としている金融機関も、多くあります。しかし「安定した収入」という点では、パート・アルバイトの方より、正社員として勤務歴が長く、収入が多い方のほうが審査は通りやすいといえるでしょう。
また、年収に対する年間返済額の割合を返済負担率といいますが、この数値が高いと「返済能力が低い」と判断されることになります。
年収が多くても借入残高が多すぎれば「返済能力は低い」と判断され、年収が少ないものの返済負担率が低ければ「返済能力は高い」と判断されることもあります。
教育ローンの審査に通らないときの対処法
教育ローンの審査にどうしても通らないときは、奨学金と併用したり、カードローンを利用したりする方法があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
奨学金と国の教育ローンを併用する
奨学金と国の教育ローンである教育一般貸付は、教育費として利用できます。
奨学金には給付型と貸与型の2種類があり、給付型であれば返済の必要がないため、ローンよりも便利だといえるでしょう。貸与型には、無利子の第一種や有利子の第二種などがあり、第一種と第二種は併用可能です。
先述のとおり、教育一般貸付は金利が低く、返済までの期間が長いのが特徴の教育ローンです。教育一般貸付は奨学金と併用できます。
入学や留学で、一時的に大きな金額が必要になる場合は教育一般貸付を利用し、日常的な学費の支払いや生活費の補填には奨学金を利用するなど、状況に合わせて借り入れると良いでしょう。
その他には、各地方自治体が扱っている奨学金や、都道府県社会福祉協議会が扱っている教育支援資金などもあります。より良い条件で借り入れできるよう、情報収集を欠かさないようにしましょう。
少ない金額であればカードローンも検討する
一時的に小額を借りる程度であれば、カードローンの利用も検討してみましょう。
カードローンの多くは、担保や保証人なしで借入可能で、資金の使い道を問いません。借入限度額の範囲内であれば、いつでも好きな金額を借り入れられ、不測の事態にも備えられます。
ただし、借入限度額内だからといって何度も借り入れていると、返済の負担が大きくなってしまうため、カードローン利用前に返済計画をしっかりと立てておきましょう。
また、資金使途が自由で教育資金にも利用できる「フリーローン」と呼ばれるローンもあります。フリーローンはカードローンより金利は低い傾向にあり、契約時に必要な資金を一括で借り入れるため、資金の使い過ぎを防げます。
借り入れた金額を確実に返せるかどうかを見極め、無理のない範囲でローンを利用しましょう。
教育ローンは審査前の準備が重要
入学金など一時的に大きな金額が必要になった場合や、自宅外からの通学にかかる生活費を補填したい場合などに、教育ローンはとても便利です。
教育ローンには民間の教育ローンと国の教育ローンがあり、それぞれ特徴が異なります。特徴を踏まえたうえで、適切なローンを選ぶことをおすすめします。
金融機関によって教育ローンの審査基準は異なりますが、返済能力があるかどうかが重要です。審査前に準備をしっかりと行ない、審査を通過できるよう対策しておきましょう。
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文/高橋 さつき